仕事終わりの遅い時間。 拓人は先に公園へ着いていた。 落ち着かなくて、 何回も缶を開けて、 結局ほとんど味なんかしなかった。 “本当に来る…?” もし途中で嫌になって帰ったら。。 もし、 やっぱり会うべきじゃなかったって思われたら。 そんな不安ばかりが頭を巡る。 でも。 遠くから歩いてくる姿を見つけた瞬間、 全部吹き飛んだ。 「……っ」 〇〇だ。 本当に来てくれた。 街灯に照らされた横顔が、 5年前より少し大人っぽくて、 綺麗で、 でも笑った顔は何も変わってなくて。 思わず顔が緩む。 “俺…何ニヤけてんだよ…” そう思うのに、 抑えられなかった。 ⸻ 「久しぶり」 〇〇が笑う。 その声だけで、 胸の奥がぎゅっとなる。 「……久しぶり」 拓人は、 変に緊張していた。 ライブより緊張してる。 でも、 〇〇は昔みたいに、 ちゃんと目を見て話してくれる。 相槌を打ちながら、 楽しそうに笑ってくれる。 その姿が嬉しくて、 苦しくて。 “あぁ… 俺この人の事、 ずっと好きだったんだな…” 改めて思い知らされる。 ⸻ 二人は空白の5年を埋めるみたいに、 ずっと話した。 仕事の事。 家族の事。 最近ハマってるもの。 昔みたいに笑えるのが、 嬉しかった。 でもその反面、 拓人はずっと感じていた。 “この時間、 終わってほしくない” また帰ってしまう。 また離れる。 そう思うだけで、 怖かった。 ⸻ 〇〇も同じだった。 目の前にいる拓人は、 変わっていなかった。 ふふって口を閉じて笑う癖。 優しい目。 ちゃんと話を聞いてくれるところ。 でも、 昔よりずっと柔らかくなっていた。 大人になっていた。 あんなに苦しかった恋なのに。 また好きになってしまう。 いや。 本当は、 ずっと好きだった。 ⸻ 少し酒も入って、 夜風が吹く。 ふと、 〇〇の髪が揺れた。 その瞬間、 拓人の中で何かが切れた。 “抱きしめたい” そう思った次の瞬間には、 身体が動いていた。 ぎゅっと、 〇〇を抱きしめる。 温かい。 ずっと会いたかった。 離したくない。 5年間、 何度夢に見たかわからない。 ⸻ 「……拓人?」 戸惑った声で、 拓人はハッと現実に戻る。 「あ… ごめん…」 慌てて少し身体を離す。 「なんか… 抱きしめたいって思ったら… 勝手に動いてた…」 〇〇は少し困ったみたいに笑う。 「何それ…笑 もう酔ってんの?」 「……酔ってない」 拓人の声が、 少し震える。 「別れた事… ずっと後悔してた」 夜の公園。 遠くで車が通る音。 でも二人の世界だけ、 静かだった。 ⸻ 「今日会って、 話して… やっぱり好きだって思った」 拓人は、 怖かった。 もしここで、 「もう無理だよ」って言われたら。 もし、 自分だけだったら。 でも、 もう誤魔化したくなかった。 「……〇〇は?」 長い沈黙…… 〇〇は俯いたまま、 小さく息を吐く。 「…………私も」 その声だけで、 涙が出そうになる。 「忘れられなかった…」 〇〇の声が震える。 「今日会うの、 本当はずっと楽しみだった… 嬉しくて… でも怖くて…」 拓人は、 もう限界だった。 「……やば… 無理…」 また〇〇を抱き寄せる。 嬉しすぎて、 感情が追いつかない。 ⸻ 「……くるしぃ…です…」 抱きしめる力が強すぎて、 〇〇が小さく笑う。 「ごめん… でもほんと… もう離したくない…」 拓人は、 〇〇の髪に顔を埋めながら呟く。 5年前、 言えなかった言葉。 ずっと後悔してた言葉。 「今日からまた… 俺の彼女な」 〇〇は、 少し泣きながら笑った。 「……はい」 ⸻ 10年先も。 喧嘩しても、 泣かせてしまう日があっても。 今度こそ、 ちゃんと向き合う。 “君だけは守る” あの日言えなかった約束を、 もう二度と離さないように。 二人はまた、 ここから恋を始める。
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