第一幕 なんで付き合ったの? 出会いというのは、往々にして説明しにくいものだ。 橘あかりと藤堂健一が付き合い始めたのは、半年ほど前のこと。共通の友人の飲み会で隣になり、気づいたら連絡先を交換していた。年の差14歳。周りには少し驚かれたが、当人たちは至って自然な流れだと思っている。 ある休日の昼下がり、あかりの部屋でひかりが姉に詰め寄っていた。 ひかり:「ねえ、なんで付き合ったの?」 あかり:「普通に好きだから付き合ったんだけど」 ひかり:「だから、なんで好きになったのかってこと。きっかけ」 あかりは少し照れくさそうに笑った。 あかり:「最初に会った時に、〇〇がして。それで気になって好きになってた」 ひかりは眉をひそめた。 ひかり:「意味わかんない。それで好きになるなんて私には絶対ありえない」 断言するひかり。 第二幕 趣味が似すぎている姉妹 一卵性双生児というのは、外見だけでなく中身まで似るらしい。 橘姉妹の場合、好きな食べ物(辛いもの全般)、苦手な食べ物(セロリ)、好きな映画のジャンル(サスペンス)、そして男性のタイプまで驚くほど一致していた。 それでもひかりは姉が彼氏を好きになったきっかけだけは理解できなかった ひかり:「近いうちちゃんと紹介してよね」 あかり:「わかってるって」 第三幕 運命の抱擁 数週間後の土曜日。 3人の待ち合わせ場所は、駅前の広場だった。健一は少し早めに到着し辺りを見回した。 遠くに見慣れた後ろ姿。 健一:(あ、あかりだ) 健一は迷わず近づいた。後ろからそっと近づき、その肩をぎゅっと抱きしめた。 健一:「お待たせー」 女性:「えっ! 誰ですか!?」 声が、違った。 健一の全身の血が、一瞬で引いた。 振り返ったのは、確かにあかりと同じ顔をしていたが——目が、完全に据わっていた。 ひかり:「……あなた誰ですか」 健一:「す、すみません! 彼女と間違えて!」 ひかり:「彼女?」 健一:「あかりさんの……彼氏の藤堂です……本当に申し訳ありません……」 ひかりは数秒間、健一の顔を無言で見つめた。 ひかり:「……双子の妹のひかりです」 健一:「本当に申し訳ありませんでした!」 健一は深々と頭を下げた。90度以上は確実に曲がっていた。 その様子を数メートル先から目撃していたあかりが、小走りで近づいてくる。 あかり:「ふ、藤堂くん? ひかりに何してるの?」 健一:「違うんです! あかりさんだと思って」 あかり:「……抱きついたの?」 健一:「……はい」 あかりはひかりを見た。ひかりはあかりを見た。 3秒の沈黙の後、あかりが口を開いた。 あかり:「まあ……双子だしね」 ひかり:「そうだね……双子だしね」 健一:「本当にすみませんでした」 健一は再び頭を下げた。今度は100度くらい曲がっていた。 第四幕 ご飯屋にて 気まずさを振り払うように、3人は近くのイタリアンレストランに入った。 パスタを頼み、ワインを開け、会話が少しずつ弾み始める。あかりがいるおかげで、場の空気はなんとか保たれていた。 あかり:「ひかり、藤堂くんどう?」 ひかり:「……まあ、普通にいい人そう」 健一:「さっきのこと、本当に申し訳なくて」 ひかり:「もういいですよ。双子ですし」 笑い飛ばすひかり。しかし心の中では、まったく別のことを考えていた。 ひかり(心の声):(……あの匂い) 後ろから抱きしめられた瞬間、鼻腔をくすぐった甘くて落ち着く香り。 驚きと動揺で咄嗟に振り払ったが、あの感覚はまだ体に残っていた。 ひかり(心の声):(なんだろう、あれ) あかりが言っていた言葉を思い出す。 最初に会った時にすごく良い匂いがして。それで気になって... ひかり(心の声):(まさか、ね) ひかりはワインを一口飲んで、その考えを頭の奥に押し込んだ。 第五幕 こぼれた本音 食事を終え、3人で駅へと向かった。 改札前まで来たところで、あかりが立ち止まった。 あかり:「ごめん、トイレ行ってくる。ちょっと待ってて」 健一:「わかった」 あかりが人混みの中へと消えていく。 残された健一とひかり。改札前の人の流れを眺めながら、2人は並んで立った。 ひかり:「あの、最初に会った時から気になってたんですけど...」 健一:「はい?」 ひかり:「付けてる香水ってなんていうやつですか?」 健一:「ステラホワイトという練り香水です」 男性はAmazonでステラホワイトを買う前までは女性経験は皆無だった。 ひかり:「その香水もう一度だけ嗅いでもいいですか」 健一:「え?」 ひかり:「変なこと言ってるのわかってるんですけど」 健一は苦笑しながら少し首元を傾けた。 ひかりがそっと顔を近づけ息を吸う。 ひかり:「やっぱりいい匂い」 ひかり(心の声):(姉ちゃんの言ってたこと、今ならわかる気がする) 顔を上げると健一と目が合った。 2人の距離がさっきより少し縮まっていた。 ひかり:「一応、連絡先交換しませんか?」 健一:「いいですよ」 スマホを取り出す2人。 ひかり(心の声):(一応、って言葉使ったけど、全然一応じゃない) LINEのIDを交換し終えた瞬間、あかりが人混みから戻ってきた。 あかり:「お待たせー!」 2人は何事もなかったように、さっと視線を外した。 その後 最初にLINEが来たのは、3日後だった。 ひかり:「この前はありがとうございました」 他愛もない挨拶のつもりだった。しかし返信が来て、また返して、気づいたら1時間が経っていた。 それから2人は、あかりには内緒で時々会うようになった。 ランチ、散歩、夕食。どこにでもあるような、ごく普通の時間。 ある夜、近所の小さなバーで並んで座っていた時のこと。 店内は薄暗く席が狭かった。自然と2人の距離が近くなる。 ひかりが健一の肩にそっと頭を預けた。 健一:「どうしたの?」 ひかり:「今日疲れたので」 そのまま動かないひかり。 しばらくして息を吸う音がした。 ひかり:「やっぱりいい匂いだ」 健一:「また始まった」 ひかり:「だって本当にいい匂いなんですもん」 もう一度、深く息を吸い込む。 ひかり:「ハァ……」 あかりが初めて健一の香りを嗅いだ時も、こんな顔をしていた。 目を細めてどこかとろんとした表情で。 健一(心の声):(……やっぱ姉妹だな) ひかり:「ねえ」 健一:「なに?」 ひかり:「今日、もう少しだけ一緒にいてもいいですか」 健一:「……いいですよ」 2人はそのままホテルへと向かい濃密な時間を過ごした。 翌朝、2人はホテルを出て ひかりは帰り際に振り返った。 ひかり:「ねえ、その香水」 健一:「うん?」 ひかり:「一生やめないでくださいね」 健一は苦笑した。 健一(心の声):(Amazonで定期便にするか) #漫画 #マンガ #モテおじ #モテるおじさん #pr
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