『19時 シンデレラ城で待ってる』 修学旅行2日目、バスの中で元彼から手紙が回ってきた_ バスは、ディズニーに向かっていた_ 「なに、だれから?」 となりで寝ていた親友が、覗いてきた_ 「前から回って来た」 元彼は、私の3つ前の席にいた_ 手紙には、元彼の名前が書いてあった_ 「ええ、あんたら別れたばっかよね?」 「うん、普通に気まずい」 「なんて書いてるの?」 「19時に、シンデレラ城で待ってるって」 「行くの?」 「行けないよ」 「なんでよ」 親友が、私の手に触れた_ 「ちょっと」 私は、手紙を引っ込めた_ 「見せてよ」 「やだ」 「あんたさ、転校すること、まだ言えてないんでしょ?」 「声大きいって」 バスが揺れた_ 「ほんとはまだ好きって、伝えなよ」 「いいって、私はそもそも、遠距離したくないから振ったんだし」 私は、窓の外を見た_ 「後悔するよ?」 「しないよ、私より可愛い子はクラスにたくさんいるし、その子たちは週5で会えるんだよ? すぐに薄れるって」 「絶対そんなことないって」 親友が、私のほほをつついた_ 「もういいって、終わったことだから」 私が顔を逸らすと、親友はため息を吐いた_ カバンを開けて、旅のしおりを取り出した_ 「終わってないって」 そう言って、表紙の端を破った_ 「ここにさ、最後のラブレター書いてあげな」 紙切れと一緒に、ペンを渡してきた_ 「もういいって」 「なんで?」 「ほんとに終わったことだから」 私は、手紙を握り締めた_ 「泣いてるじゃん」 親友が、私の右ほほに触れた_ 「泣いてない」 私は、まぶたを擦った_ バスが停まって、 親友と目が合った_ 「なんでさ、泣いたあとの顔って、こんなにも盛れるんだろうね?」 親友は笑って、私の前髪を整えた_ 「可愛くないし……」 私は首を振った_ 「その顔、あいつにも見せてあげな」 親友はそう言って、元彼を指差した_ 「むりだって……」 「だいじょぶ、あたしは先に降りて待っとくから」 親友が、私の頭を撫でて立ち上がった_ 「ちゃんと伝えなよ? 転校しても好きってこと」 親友がバスを降りると、元彼が立ち上がった_ こっちを見て、すこしだけ笑った_ 私が目を逸らすと、元彼は歩き出した_ 「待って」 そう、言いたかった_ でもいまさら、 呼び止めることはできなかった_ 元彼は、バスを降りてしまった_ 私は、後ろを振り返った_ 「あ、ちょっといい?」 「え?」 後ろにいた子と、目を合わせた_ 「これ、回って来た」 私は、手紙を渡した_ 「え……」 その子は、いちばん後ろの席だった_ さっき私は、 『これ、いちばん後ろまで回して』と、 前の席の子から手紙を受け取った_ 私は中身を勝手に見て、 勝手に傷ついた_ 『19時 シンデレラ城で待ってる』 それは、私宛てではなかった_ 修学旅行2日目、 元彼はちゃんと、 私を元カノにしてくれた_ もう私は、 心置きなく転校できる_ そう、 思うしかなかった_ それでもまだ、 私だけが、 バスを降りることができなかった_ 「ほら、行くよ」 声がして、 私はゆっくりと、顔を上げた_ ひさしぶりに笑って、 また私は、歩き出した_ #人生最終日の僕よ #wacci #PR
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