土曜日の朝。 坂田敏夫は今日も淡々と起き上がり淡々とコーヒーを飲んだ。 午後からの出社までまだ時間がある。 坂田:「……少し横になるか」 リビングのソファーに身を預けると秋の穏やかな日差しがカーテン越しに差し込んでいた。 瞼が重くなる。 そのまま、すぅっと意識が遠のいた。 どれくらい経っただろう。 リビングに忍び足でさくらが入ってくる。 後ろには友人のあかりとひなたがついてきた。 さくら:「ほら、見て。爆睡してる」 あかり:「え、ほんとだ。お父さんって感情ないって言ってたけど……ほんとに?」 さくら:「そう。パパってね、怒ったりしないんだよ。何しても」 ひなた:「そんな人いないでしょ(笑)。普通怒るじゃん」 さくら:「ほんとなんだって。じゃあ証明してあげる」 さくらはにやりと笑い、テーブルの上からマジックペンを手に取った。 三人は声を殺して笑いながら、眠る坂田の顔にペンを走らせた。 額には大きく「娘のさくら大好き♡」 頬には星とハートのマーク。 鼻の頭には小さな丸。 ひなた:「プッ…やばい、似合いすぎ(笑)」 あかり:「起きないの、ほんとに?」 さくら:「起きないよ。完璧に寝てるもん」 坂田は微動だにせず穏やかな寝顔のまま顔中に落書きを施されていた。 午後になり目覚めた坂田は時間ギリギリだったため急いで着替えて家を出た。 電車に乗り込むとなんとなく視線を感じる。 向かいの席のサラリーマンが口元を押さえてそっぽを向く。 隣に立っていたOLがスマートフォンをこちらに向けた気がした。 坂田:(……なんだろう。今日は人が多いのか) 特に気にすることなく坂田は吊り革を握って外の景色を眺めていた。 会社に到着すると廊下でばったり山崎に出くわした。 山崎:「坂田さん!おつかれっす……って、ちょ、ちょっと待ってください」 坂田:「ん?」 山崎:「坂田さん……その顔どうしたんすか?」 山崎は口を手で押さえ、肩を震わせている。 坂田:「顔?」 山崎:「鏡見てないんすか?めちゃくちゃ書いてありますよ!?」 坂田:「……書いてある?」 坂田はスマートフォンのカメラをインカメラに切り替えた。 画面に映ったのは——「さくら大好き♡」と書かれた自分の顔だった。 坂田:「……あぁ」 山崎:「あぁ、じゃないっすよ!(爆笑)これ娘さんにやられたんすか!?」 坂田:「たぶんそうだな」 山崎:「怒らないんすか!?」 坂田:「怒る気にならないな」 山崎:「坂田さんって……ほんとすごいっすね(笑)」 第三幕:帰宅報告 夜、家に帰るとさくらがリビングでスマートフォンをいじっていた。 坂田:「さくら、今日会社で笑われたぞ」 さくら:「え、マジで!?(笑)バレた?」 坂田:「山崎に会うまで気づかなかった。もうやめろよぉ〜」 さくら:「(笑)パパ、全然怒ってないじゃん」 坂田:「怒り方がわからないんだよな、俺」 さくら:「それがすごいんだって(笑)」 さくらはすぐにあかりとひなたにLINEで報告した。 さくら:「パパに落書きの件バレたけど、全然怒られなかった(笑)」 あかり:「え、ほんとに!?神じゃん!」 ひなた:「ていうか会社にそのまま行ったの!?やば(笑)」 さくら:「そう。山崎さんに指摘されるまで気づいてなかったって」 あかり:「ほらね、言ったでしょ。パパは何しても怒らないの」 ひなた:「優しすぎるでしょ。うちのお父さんなんてすぐ怒鳴るし最悪だよ」 あかり:「いいなぁ……さくらのお父さん」 第四幕:金曜日、友達が泊まりに来る日 それから数日後の金曜日。 坂田が会社を17時に終え18時に帰宅するとリビングから賑やかな声が聞こえてきた。 坂田:「ただいま」 さくら:「あ、パパおかえり」 リビングには見覚えのある顔が二つ。 あかりとひなたが少し緊張した様子で立ち上がった。 あかり:「あ、えっと……この前は顔に落書きしてしまって、ごめんなさい!」 坂田:「あぁ〜、全然気にしなくていいよ」 ひなた:「……お父さんって、本当に怒ったりしないんですか?」 坂田:「あぁ〜。怒るって感情が、いつの間にか消えちゃって」 ひなた:「消えちゃって、って……どういうことですか?」 坂田:「自分でもよくわからないんだけどな。気づいたらそうなってた」 あかりとひなたは顔を見合わせた。 あかり:「じゃあ……今から何かしても怒らないってこと、ですか?」 坂田:「たぶんな」 その言葉を聞いた瞬間——あかりが勢いよく坂田の頬に手を振り抜いた。 パァン! 坂田:「……あっ!」 坂田の目が大きく見開かれる。 部屋に沈黙が流れた。 あかり:「ごめんなさい!!さくらが次会った時にいきなりビンタしてみてよって言ってたから……つい……!」 坂田:「……あぁ、全然いいよ」 さくら:「(笑)パパ目だけ大きくなったじゃん」 坂田:「さすがに驚いたな。でも怒りはないな」 ひなた:「ほんとに怒らない……すごい」 第五幕:おもちゃ扱いされる坂田 それからしばらく、坂田はさくらたちのおもちゃと化した。 ひなたが坂田の頬をむにむにと両手で挟む。 あかりが坂田の頭頂部をじっと見つめ少し薄くなった頭部をパンパンと叩く。 さくらがスマートフォンで一部始終を動画に収める。 ひなた:「ほんとに無反応だ(笑)」 あかり:「人形みたい」 坂田:「……好きにしてくれ」 さくら:「パパって昔からこうなの?」 坂田:「仕事してたらいつの間にかな」 そんな中、あかりがふと坂田の背後に回り込んだ。 何を思ったのか坂田の首元に顔を近づけ——そのまま、がぶっと軽く噛みついた。 その瞬間。 あかりの鼻腔に甘くて深みのある香りが一気に飛び込んできた。 あかり:「……っ」 思わず動きが止まる。 あかり:「ねえひなた、さくらのお父さんの首めちゃくちゃいい匂いする……やばい」 ひなた:「え?」 あかり:「ほんとに。嗅いでみて」 今度はひなたが坂田の首元に後ろから顔を近づけ同じように噛みついた。 ひなた:「……っ!ほんとだ!何これ!?すごい匂い……!」 坂田:「……くすぐったいな」 二人の視線が合う。 言葉にならないままただ顔を赤らめていた。 第六幕:深夜のリビング 夜が更け、さくらが先に眠りについた。 リビングでは坂田がひとりテレビのバラエティ番組を眺めていた。 音量を絞った画面の中でタレントたちが笑っている。 坂田:(明日は休みか……) そのとき廊下からそっと足音がした。 振り返るとあかりとひなたが二人揃って立っていた。 坂田:「まだ起きてたのか」 あかり:「……眠れなくて」 二人はゆっくりとソファーの後ろに回り込んできた。 そして左右同時に坂田の首元に顔を埋めた。 坂田:「……っ、おい」 あかり・ひなた:「最初噛み付いた時に良い匂いしたんだけど、あれって何ですか?」 坂田:「あぁ……練り香水だよ」 ひなた:「練り香水?」 坂田はソファーの脇に置いていた鞄を手元に引き寄せ小さな白いケースを取り出した。 坂田:「ステラホワイトっていうやつ。この前Amazonで限定販売してるの見つけて試しに買ってみたんだ」 あかり:「ステラホワイト……」 ひなた:「もう一回、塗ってみてもらえますか?」 坂田:「……まあ、いいけど」 坂田はケースを開け手首と首元にゆっくりと塗り込んだ。 ふわりと甘くて深い香りが夜の空気に溶け込む。 あかりとひなたが、同時に坂田に抱きついた。 あかり:「コレコレ……!この匂い!」 ひなた:「やばい……落ち着くのに、落ち着かない感じ」 坂田:「……なんか好評だな」 第七幕:ベッドへ あかり:「ねえ、お父さん」 坂田:「ん?」 あかり:「……寝室、行きませんか」 坂田:「……え?」 ひなた:「なんか眠くなってきちゃって。お父さんの匂いを嗅いでたら……ここで寝ちゃいそうで」 坂田:「……まあ、床で寝るよりはいいか」 淡々とした返答に、あかりとひなたは顔を見合わせてくすりと笑った。 坂田のベッドに三人が落ち着く。 あかりが坂田の隣に転がり首元に顔を埋める。 ひなたが反対側に寝そべり手首の香りをそっと嗅ぐ。 坂田:「……子どもかお前たち」 あかり:「子どもじゃないですよ」 ひなた:「この匂い嗅いでると安心するんです」 坂田:「……そうか」 あかり:「ハァハァ」 ひなた:「ハァハァ」 だんだんと息遣いが荒くなっていくあかりとひなた。 そして坂田の頬に左右からキスする2人。 そのまま熱く激しい夜を過ごした。 翌朝。 さくらが父親の寝室を覗くと父親の両脇に友人二人が幸せそうに眠っていた。 さくら:「……パパ、何してんの!?」 坂田:「……俺は何もしてないぞ」 さくら:「言い訳がましい(笑)」 あかりとひなたはさくらには激しい夜のことは秘密にした。 もちろん坂田もこんなことを娘に言えるはずもない。 その後も3人の秘密な関係は続いた。 #漫画 #マンガ #モテおじ #モテるおじさん #pr
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